コスモス

道を歩いていてプランターに植えられたコスモスを見かけました。

コスモスと言えば、「秋桜」とも書くように秋の訪れを感じさせてくれる花ですね。

日本の花とばかり思っていましたが、熱帯アメリカ原産で、日本には明治12年に入ってきたそうです。

そう言えば、昔の物語や和歌にはコスモスなんて出てこないですものね。

 

中学生のころ、ちょっと早熟でいつも本を持ち歩いていたお友達が見せてくれた詩の、「あなたは庭のコスモスより弱く」という一節を思い出しました。

昔のコスモスって、いまどきの園芸用のものに比べると丈が長く、いつもなよなよとしていたような印象があります。

きっとなよなよした、すぐもたれかかってくるような女が好きな男が書いた詩なんだろうと勝手に思っていましたが、ちょっと気になったので調べてみました。

見つかったのは…

 

あなたとわたしは向ひあって腰をかけ、

あなたはまぶしげに西の方の山をのぞみ、

わたしはうっとりと東の方の海をうかがひ、

然しふたりはにこにこして同じ思ひを樂しむ。

とありし日のとある家の明るいバルコン。

何も知らない家の主人にはよき風景をほめ、

ふたりはちらちらとお互の目のなかを樂しむ。

戀人の目よそれはまあ何といふ美しい宇宙だろう。

全くあなたのその目ほどの眺めも花もどこにあろう・・・

おお、思ひ出すまい。ふたりは庭のコスモスより弱く、

幸福は卓上につと消えた鳥かげよりも淡く儚く、

嘆きは永く心に建てられた。あの新築の山荘のやうに

 

佐藤春夫の「感傷風景」という詩でした。

「あなたは」というのは私の記憶違いで、「ふたりは」だったんですね。

恋し合う若い二人が庭のコスモスより弱く、幸福は儚かったという詩でした。

 

甘酸っぱい青春の空気が、ふと頭の中を吹き過ぎたような秋の日でした。