チケットは買ってあったけど、なかなか行けないでいた映画「マリア・カラス 伝説のオペラ座ライブ」を観てきました。
チラシでは静岡シネ・ギャラリーとなっていますが、宝泰寺というお寺さんが建てたサールナートホールの中にあるんですね。
静岡駅北口近く、お寺とホールは向い合せに建っています。ホールにはコンサートや演劇鑑賞で何度も行っています。
忘れていました(笑)。私も出演したことがあります。
左がサールナートホール、右がその向かいにある宝泰寺です。
さて、映画の感想を。
マリア・カラス(1923~1977)
余りにその名を轟かせ、存在が大きかったために、もっと長く活躍していたようなイメージを持っていましたが、最盛期は1950年か1960年ぐらいまでの僅か10年ほどだそうです。
そして、53歳の短い人生。
富豪のメネギーニと過ごした期間と、船舶王オナシスとの恋愛が有名ですが、その後は歌手のディ・ステファノとも交際があったんですね。
この映画の中のパリ・オペラ座の公演は1958年ですから、まさに全盛期の円熟した歌声を聴かせています。
曲目は、前半ではベッリーニ「ノルマ」から4曲、ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」から3曲。ロッシーニ「セビリアの理髪師」から「今の歌声は」
後半はプッチーニの「トスカ」第2幕の上演でした。
最初にオーケストラがヴェルディの「運命の力」を始めたときに、正直、「うわぁ」と思っちゃったんですが。音質がよくなくて。
でも、1958年の映像と音ですからね。
フィルムにも多少シミがありましたね。
でも、一たんカラスの歌が始まると、その圧倒的な声の力、幅広い声域を自由に使いこなす技巧、真に迫る演技力で、全く気にならなくなってしまいましたから、すごいです。
特に後半の「トスカ」は、歌も演技も圧倒的で、悪役のスカルピア男爵を演じたティト・ゴッビも当時のイタリアオペラを代表する名歌手だそうですが、歌、演技ともに真に迫っていて、2人が対峙する息詰まるような展開に目も耳も奪われました。
日本の時代劇にも、悪代官とか越後屋(笑)とか出てきますが、このティト・ゴッビ演じるスカルピアの悪者ぶりに比べると可愛く思えるくらいです。
カラスは1973年と74年に来日して公開レッスンやリサイタルをしましたが、この74年の演奏が公開の場では最後になったそうです。
彼女の死は謎に包まれていて、遺産を横領したヴァッソ・デヴェッツィというピアニストに毒殺されたという説もあるそうです。
名曲はずっと残るけど、生身の歌手や演奏家の芸術は、一代限りのもの。
儚いだけに一層美しく、強く胸に迫ります。
この映像が残っていたのは、本当に幸いだったと思います。
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