ミゼレーレ Miserere

昨日、クリスマス会で子供たちとミゼレーレを聴いたという記事を書いたので。

 

ミゼレーレ(Miserere)はグレゴリオ・アレグリ(Gregorio Allegri 1582~1652)によって、1630年代に、旧約聖書詩篇第51をもとに作曲されました。

一方は四声、他方は五声の二重合唱で、ア・カペラで歌われます。

 

ローマのシスティナ礼拝堂で、聖週間の水曜から金曜にかけて行なわれる朝課の中でも「暗闇の朝課」に際して歌われました。

暗闇の朝課は、午前3時ごろから始まり、ろうそくの灯りを一本ずつ消してゆき、全部消されるまで続くということです。

想像しただけで、神秘的で厳かな空気に吸い込まれていきそうですね。

この曲は、聖性を保つために、楽譜を写したり持ち出すことが禁じられていました。

しかし、当時14歳のアマデウス・モーツァルトがローマを訪ねた際にシスティナ礼拝堂を訪れ、水曜礼拝でこの曲を聴いて、記憶を頼りに楽譜に書き起こしてしまいました。金曜に再度訪れて細かい部分を修正したそうですが。

この楽譜がイギリス人の歴史学者の手に渡り、ロンドンに持ち帰って出版されたそうです。

 

教皇は、それを知ってモーツァルトを召喚しましたが、彼を非難するのではなく、その才能と神業を絶賛しました。

これ以降、門外不出の禁令は撤廃されたそうです。

 

現代だったら、著作権を巡って裁判になったりするんでしょうか。

でも、モーツァルトは楽譜を盗み出したわけでもなく、写したわけでもないですもんね。

耳で聴いて全てわかってしまうなら、もうお手上げということでしょうか。

それに、楽譜があったとしても、ア・カペラで二重合唱なんて、とてもとても難しくて、気軽に合唱大会で歌うなんてできないですよね。

システィナ礼拝堂の聖週間という、その空間と空気も特別なものですものね。

 

モーツァルトのこのエピソードも面白いですが、それより何より曲自体が、魂が高みに引き上げられていくような美しさです。