つけ加えて

前回の記事につけ加えて。

ピアノに限らず、何か芸事を身につけるには、最低でも10年ぐらいは必要ではないかと私自身は考えています。

なので、幼いお子さんの進度を過剰に気にしたり、ほかの子と比較してやきもきするのではなく、長い目で見守って、一人一人の中に音楽が育って自然に流れ出すのを待ちたいと思うのですが、現実にはなかなか難しい面もあります。


こちらがゆったり構えて、ああ、この子もようやく自分で楽譜が読めるようになってきたなとか、今度の発表会ではあの曲に挑戦できるのでは、と考えていると、ある日突然、お母さんから「先生、お世話になりましたが、今月で」と切り出されたりします。


どうも以前よりサイクルが短くなっているんですね。

ピアノは塾に行くようになるまでとか、中学になって部活を始めたら区切りというふうに考えられる方が増えているような気がします。


もう少し粘り強く、細く長くでも続けてほしいと思うのですが、時間の制約や経済的な問題もあるでしょうし、こちらの価値観を押しつけることもできません。


もし初めからいつごろまでというお考えがあるのなら、伝えておいていただければ、こちらもそれをある程度頭に置いて、決して促成栽培ではありませんが、指導プランを立てることもできます。

もちろんお子さんがピアノが好きで、もっと続けたくなったということになれば、こちらとしてもとても嬉しいことですが。


ただ言いたいことは、ピアノはレッスンを受けている間だけのものではないということです。

何年かレッスンを受けた人なら、ある程度は基礎ができて自分で楽譜を読めるようになるはずですから、レッスンに行かなくなったらそれきりピアノの蓋も開けないというのではなく、弾かない時期も弾く時期もあっていいですが、折に触れてピアノに親しんでもらいたいと願っています。


生活の中に文化が根づくというのは、そういうことじゃないかなと思います。